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デュレーションってなんだろう

第5回 債券投資の基本構造を理解する (その1)

 1. はじめに

前回までで、デュレーションの基本概念と、実務で使われている各種デュレーションの定義式、意義等をご紹介しました。今回からは債券投資についての基本的な部分を整理しながら、デュレーションが債券運用の世界でどのように使われるかという点を見ていきましょう。


 2. 債券投資の基本構造を整理する

債券投資というと、投資の初心者の方は「満期まで保有してクーポン収入を得る」ことが投資目的のような気がするかもしれませんが、いわゆる機関投資家と呼ばれるような人たちにとってはちょっと違います。

債券の価格は償還時には必ず額面価格となりますが、そこにいたるまでは、利回りの変化に伴い上下します。債券の利回りは世の中の金利水準を反映しますから、基本的に世の中の金利水準が低下すれば債券の利回りも低下し、債券価格は上昇しますし、世の中の金利水準が上昇すればその逆となります。

例えば、短期間の投資でも、債券価格が大きく上昇した場合に売却してしまえば、大きな収益が得られる場合もあります。いわゆる自己勘定の債券ディーリングで収益を挙げようという場合などはこういった手法を考えている場合が多いわけです。

一方、機関投資家と呼ばれるひとたちの中にも、もっぱら最後まで債券を持ちきることを前提に投資するという人たちもいます(このような投資スタイルを債券投資の世界でバイ&ホールドと言います)。最後まで持ちきれば、債券の場合、だいたい現在の利回り程度の収益が得られる(後述)わけで、予想外の大きな収益というのは望めませんが、その代わり手堅く収益が期待できるというメリットがあります。

しかし、短期の投資は無論のこと、償還まで持ちきる場合でも、債券投資収益は確定しているわけではありません。一般的な固定利付債では、運用途中に入ってくるクーポンがあります。その金額が大きければ、当然そのクーポンを再運用するでしょう。そのときそのクーポンをどんな金利で運用できるか、ということで実質的に収益は変わってきます。

では今、ある固定利付債に投資して運用するという場合、その債券から得られる収益を変化させる要因は何でしょう。債券投資から得られるものは、クーポン、クーポンの再運用収入、(売却あるいは償還時の)価格、の3つしかなく、うち固定利付債ではクーポンは決まっていますから、結局収益を変化させる要因としてはクーポンの再運用収入の大小と売却時の価格、ということになります。

つまり、当たり前のようですが、ある債券に投資した場合の収益率がどうなるかは
 (1) クーポンの再運用収入
 (2) 売却時の価格
という二つの要素だけで決まるわけです。

しかし、この二つの要素が今後どうなっていくかは投資時点では通常分かりません。つまり、一般的に言って、債券に投資したときの収益がどうなるかは投資時点では厳密には分からないのです。

逆に、この二つの収益率を決める要素の今後の変化を適格に予測し、最善の投資行動を取っていくことで、よりよい債券投資が可能になってくるといえます。

ただ、この二つの要素がどの程度債券投資に影響を与えるかというのは、実は債券の投資期間によります。 おそらく、直観的にイメージしていただけるかと思いますが、(1) のクーポンの再運用収入がより大きな影響を与えるのは基本的には長期の投資の場合であり、(2) の売却時の価格の影響がより大きいのは短期の投資になります。

このように、債券の投資というものは、その期間の長短により、何が収益率を決める重要な要素か、投資において着目するポイントはどこか、という点で微妙に異なります。そこで、次に、債券の投資期間が短い場合と長い場合に分けて、それぞれどのように収益率が決まってくるかを見て行きたいと思います。

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