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エクセルを使ったモンテカルロ・シミュレーション

第6回 シミュレーションによる債券 VaR (その4)

 5. ここまでの整理

この講座の目的は、皆さんにモンテカルロ・シミュレーションを学んでいただくことですが、どちらかというと、デュレーション・コンベクシティティの概念と債券の価格変化特性の関係分析のような話が続いており、話の方向性が見えなくなってきた方もいらっしゃるかと思います。

とりあえず、ここで5回目からの話を整理しておきたいと思います。

  • 利回りの変化と債券価格変化の関係は非線形。よって、利回り変化が正規分布すると仮定した場合、債券価格変化は正規分布ではない。
  • しかし、「それほど利回り変化が大きくない」範囲では近似的に線形と認識してもあまり問題はないことが多い。近似的に線形と認識する場合、デュレーション概念を使って債券価格変化を計算できる。また、また近似的に線形と捉えた債券価格変化であれば、利回り変化が正規分布のときやはり正規分布になる。
  • しかし、期間が非常に長い債券や、利回り変化が激しい債券の場合、線形で近似することには無理がある。この場合コンベクシティ概念を加えて近似的な価格を計算すればほぼ実際の値に近い値が得られる。ただし、コンベクシティも追加して計算した近似値は、利回り変化が正規分布のとき正規分布にならない。

次回から「債券ポートフォリオ」を対象とした VaR 計算の例が始まりますので、ここで以上の点をしっかり頭に入れていただければと思います。

なお、念の為申し添えますが、個別債券を対象にして VaR を計算するというのであれば、デュレーションを利用した近似的な計算の例であれ、さらにコンベクシティを加えて近似的な計算をする場合であれ、 VaR を算出するのにそもそもシミュレーションなどは全く不要です。

何故ならば、利回りが上昇すれば価格は下がるという関係があり、利回りと価格は一対一で対応していますから、例えば 99% の VaR を求めたければ、利回り変化について(上昇方向から)1%の利回り変化を求めて、その利回り変化のときの債券価格変化を調べればよいだけです。

今回出てきた表1、表2の、シミュレーションによる VaR が表示されている箇所の下の方に 「理論値 VaR 」という部分があったことに気付かれた方もいらっしゃると思います。表1だとこの部分です。

figure

これはどういう計算をしているかと言えば、今申し上げたように、「上から 1%」の利回り変化に基づく価格変化を求めれば 99% の VaR になるという観点から、「1次近似」とある部分については、

  0.03/100 × 2.33 × デュレーション      (3)式

という式が、また、「2次近似」とある部分については、

  (3)式の値 + 0.5 × ( 0.03/100 × 2.33)2 × コンベクシティ      (4)式

という式が入力されています。

ここでは利回り変化が期待値ゼロの正規分布に従うという前提に立っていますので、その「上から 1% 」の値は 2.33×標準偏差 で計算できます。
(この講座の最初の方では 2.33 ではなく 2.326 という値を使っていましたが、実務では 2.33 という値が使われることが多いので、ここからは信頼区間に対応する正規分布の係数は 2.33 ということにします。)

従って、ここでは「上から 1% 」の利回り変化に基づく、デュレーション及びコンベクシティに基づく近似的な価格変化の「真の値」を計算しているわけです。また近似的と言っても、コンベクシティまで使ったものは真の価格変化とほぼ同じであることは前にも触れたとおりです。もちろん、デュレーションやコンベクシティなどを使わずに、利回りと価格の関係式から、上から 1% の利回り変化に対応する真の価格変化を計算し、それを VaR としても全く問題ありません。

*   *   *   *   *

つまり、ここまで長々とシミュレーションによる債券の VaR 計算を紹介してきましたが、 VaR 計算としてはシミュレーションなどする必要はない例をずっと取り上げていたわけです。すでに気付かれていて訝しく思っていた方もいらっしゃるかもしれません。次回以降の話を理解するための基礎知識という観点で説明してきたのですが、少し冗長だったかもしれません。

次回以降は「債券ポートフォリオ」が対象になりますので、もう少し実務的な VaR の計算例をご紹介できると思います。

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