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デュレーションってなんだろう
第7回 ポートフォリオのデュレーション (その2)
2. デュレーション再考
デュレーションという概念の限界として「水平なイールドカーブがパラレルに変化することを前提にした概念であるから、実際の金利変化及びそれに伴う価格変化を把握するには不十分な概念である」ということが言われることがあります。
どうしてそういう事が言われるかというと、この講座でご紹介した定義式からもわかるように、デュレーションは複利利回りの式を前提にしているからです。複利利回りの式はよくご存知のように、債券のすべてのキャッシュフローを同じ金利で割り引く式です。1年後のキャッシュフローも5年後のキャッシュフローも同じ金利で割引き、その合計を価格と考える式です。
多くの方はご存知だと思いますが、債券の価格を理論的にきちんと考えようとすれば、それぞれのキャッシュフローを、キャッシュフローの発生期間に対応したスポット・レート(割引債の複利利回り)で割引き、その合計を価格とする必要があると一応考えられます。また、その考え方からすれば、それぞれのキャッシュフローに対応するスポット・レートの変化により、価格変化も起こるわけで、例えば残存期間5年、クーポン1年払いの利付債券の価格変化は1年から5年までの5つのスポット・レートの変化によりもたらされる、ということになります。
そして、こう考える場合、当然5つのスポット・レートは皆同じ大きさで金利変化するわけではなく、それどころか、1年のスポット・レートは下がったのに、5年のスポット・レートが上昇した、というようなケースもあるでしょうから、債券の価格変化をきちんと捉えようとすれば、5つのスポット・レートすべての変化を別個に考慮しなければならないはずだ・・・ということになります。
このような考え方からすると、すべてのキャッシュフローを同じ金利で割り引く複利利回りを前提にしたデュレーションは、いかにも現実離れした欠陥の多い概念、ということになります。
この議論は理論的にはもっともなのですが、実際の実務的な観点からすると、逆に的外れな部分もある議論です。さきほど展開した議論は、「債券の価格は、それぞれのキャッシュフローをその期間に対応したスポット・レートで割り引くことで求められる。」ということを前提にしています。
ですが、現実の市場の債券の価格の決定過程を考えると、少なくとも現在のところ、スポット・レートを使ってキャッシュフローを割り引いて債券価格を決めている、というより、始めに価格及び利回りがあり、スポット・レートなどは、むしろ逆に利付債の価格からブート・ストラッピングなどで理論的にもとまるものに過ぎない、というのが現実だと思われます。
つまり、市場の投資がより直接的に把握し、チェックしているものは価格及び利回り、特に利回りなわけです。(利回りと価格は表裏一体のものですが、一般的には、利回りの方により投資家は注意を払っているといえるでしょう。)例えば、今後の債券価格の変化を考える場合、「利回りの水準がこう変わるだろう・・・」という予想をしている人は多くとも、「スポット・レートの水準がこう変わるから、債券価格もこう変化するだろう・・・」というような考え方をしている人はあまりいない、ということです。
このようなことを考えると、少なくとも投資の観点から将来の債券価格の変化リスクなどを考える場合は、市場で実際に投資家が注目し観察している利回りをベースに、予想なり判断なりをしていく方がより現実的手法と言えるのではないでしょうか。
もちろん、スワップ等、スポット・レートでキャッシュフローを割引いて価格を求めることが常時行われているような取引や、大規模なポジションの定量的なリスク額把握など、スポット・レートをベースにしたリスク把握がより適している場合は多いでしょう。しかし、投資の観点から、債券投資のリスクを把握する場合には、やはり投資家がチェックしている利回りを基準に考えていく方が戦略の分析などがしやすく、実務のニーズにマッチしていると思います。
ただ、もちろんデュレーションが「近似」に過ぎないという問題点は常にあります。その点は「コンベクシティ」などで補っていく他ありません。
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