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【証券アナリスト対策】チャレンジしたいが数学が苦手という方へ
 金融数理Σ3級コース

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エクセルを使ったモンテカルロ・シミュレーション

第4回 分散共分散法による VaR の考え方 (その3)

 3. 分散・共分散法との関係(つづき)

このように、 VaR の計算対象になる損益が正規分布に従うという前提が置ける場合、期待値と標準偏差さえ分かれば、シミュレーションなどをする必要はなく、計算で簡単に VaR を求めることができます。

今は、信頼区間が 99% の VaR でしたが、信頼区間を他の値、例えば 95% とか 99.9% とかにする場合でも基本的な考え方は同様です。要は標準正規分布で N(k)=0.05 (信頼区間 95% の場合)、あるいは N(k)=0.001 (信頼区間 99.9% の場合)となる k の値を求め、それを使って(3)式で計算すればよいだけです。

また、このような k の値も、皆さんすぐ計算できるはずです。何故ならば、我々は標準正規分布の累積分布関数の逆関数 NORMSINV の存在を知っていますから。
N(k)=0.05 となる k は、 NORMSINV(0.05)=-1.645
N(k)=0.001 となる k は、NORMSINV(0.001)=-3.09 となります。

*   *   *   *   *

ここまでモンテカルロ・シミュレーションの方法について色々述べてきましたが、そもそもどういう場合にモンテカルロ・シミュレーションが効果を発揮するか、という点についてあまりきちんと述べていなかったように思います。

モンテカルロ・シミュレーションが効果を発揮するのは、基本的に、確率的な現象についての値を計算で求めることが出来ない場合です。このような場合に、前提とする確率分布に沿った形で乱数を発生させシミュレーションを行い、その結果から求めたい値を推測しよう、というのがモンテカルロ・シミュレーションの利用目的です。

その場合、乱数が前提とする確率分布に従って発生していなければなりませんから、モンテカルロ・シミュレーションによる計算精度を高めるためには、基本的にはシミュレーション回数を多くする必要があります。発生させるのは「乱数」なので、発生回数が少なければ、前提とした確率分布とは全然違う乱数発生になってしまう可能性もあります。発生回数を多くすれば、いわゆる「大数の法則」により、基本的に想定する分布に近い乱数発生になることが期待できるわけです。

例えば、サイコロを 6 回振っただけでは、 2 と 3 しかでなかった、というようなことも当然ありえるわけで、この場合本来のサイコロの分布と実際の得られた乱数の分布は完全に異なっているわけですが、 6 万回振れば、全部の目が大体 1/6 ぐらいの割合で出ているはずです。つまり、全部の目が均等に 1/6 で発生するという本来の分布に近い乱数の分布が得られることが予想できます。

このような理屈で、なるべくたくさんのシミュレーションを行い、そこから計算では求められない値を推測しようというのがモンテカルロ・シミュレーションの本質です。ただ、ある確率分布を想定しているが、それに基づく現象について計算ができない、というのは基本的に問題が複雑な状況の場合なので、ここではまず、実際は計算で求められる場合について、シミュレーションを行ってみたわけです。

この講座ではあまり急がず、少しずつ難しい例を取り上げて、モンテカルロ・シミュレーションの有用性を見ていきたいと思います。次回からは債券ポートフォリオの VaR の計算について考えてみましょう。

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